第 846 回 い な づ ま 句 会
俳誌「かつらぎ」主宰 森田純一郎先生 指導
令和5年1月21日
兼題 ・ 当 季 雑 詠 五 句
選 者 吟
神饌田一隅に芹見つけけり
大寒のテレビ南国映しけり
煤逃の茶房アクリル板ばかり
万博を待つ大阪に大初日
ワクチンを打ち大寒の街に出づ
いなづま句抄
〇仲の良き家族にひとつ福袋 冨山 勝幸
〇墨の香の馥郁として年明くる 難波 正行
〇阪神忌君は焼け逝く物の中 留岡 寛
〇幕跳ねてまだ残照の五日かな 渡邉 建彦
〇寒燈や一人留守居の駐在所 木下 貴友
〇不滅の灯燃ゆる公園阪神忌 広田 祝世
〇囲はれの身の寒牡丹息づけり 出店智惠呼
〇参拝の列とはべつに焚火の輪 奥村 恵子
〇いつもより声張りあぐる初披講 東代 舞
〇初寝覚いつも通りの起床かな 友岡 淑子
〇霊泉の流れに沿ふや恵方径 前野 美枝子
〇鹿せんべい持つ子は鹿を恐れけり 野尻 弘輔
(〇印選者選)
(注)
神饌田(しんせんでん):神に供えるお米を育てる田んぼのことで、新嘗祭などの祭典にお供えされる。
煤逃(すすにげ):新年を迎えるために煤払をするが、その掃除の足手まといとなるのを避け、時間をつぶしに家の外に
出てしまうこと。(季語)
馥郁(ふくいく):よい香りがただよっているさま。
阪神忌(はんしんき):二十八年前、一月十七日に起こった阪神・淡路大震災をさす(季語)
寒牡丹(かんぼたん):もともと初夏の花である牡丹の花芽をつみとって冬に咲かせるように、藁囲いをして、
寒さの中で大輪の花を咲かせる (季語)
寒燈(かんとう):冬の夕暮とともに灯されている灯のこと (季語)
初披講(はつひこう):新年初めての句会(初句会)で選句用紙を集めて披講者が読みあげること。(季語)
霊泉(れいせん):地下から自然に湧き出て来る霊験あらたかな泉のこと